慶應義塾大学理工学部電子工学科  神成研究室

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フェムト秒プラズモンの計測制御による時空間ナノフォトニクスの開拓

研究ミッション

本来,回折限界以下の空間分解能を有さない,光によるナノメータ領域の制御された光と物質の相互作用を実現できるのが,励起光と金属ナノ構造の自由電子の集団的応答とが結合したプラズモン場である。金属ナノ構造の反電界形成が構造に依存することから,材料および構造によってプラズモン共鳴波長が存在し,ナノ空間に局在した強い電場を発生できる。こういったプラズモン共鳴は,金ナノ構造を用いたプラズモン増強ラマン分光などのセンシングや,局在的な生体組織の加熱,等の応用に期待が持たれている。  本研究では,フェムト秒レーザー励起によって発生する超高速プラズモン場に着目する。プラズモン共鳴は瞬時の光周波数に対する電気分極の応答であるので,広帯域なフェムト秒レーザーの瞬時周波数をデザインすることで,どのナノ構造がどの時刻にプラズモン共鳴を示し電界が局在するかを決定論的に制御することができる。これは,ナノ空間の光電場をフェムト秒で制御する究極的な時空間制御である。

周波数チャープレーザーパルスによるプラズモン時空間制御の例


金属ナノ構造の時空間プラズモン特性は,金ナノ構造のプラズモン応答関数が既知であれば,励起するレーザーパルス波形から一意的に決定できる。しかし,このプラズモン応答関数は,構造の形状のみならず周囲のナノ構造,基板,分子修飾等によって変化するために,直接計測する必要がある。しかし,一度応答関数が計測できれば,プラズモン場の時空間制御は励起レーザーパルスの振幅・位相整形によって実現できる。本研究では,プラズモン応答関数の計測と,応答関数に基づいた決定論的制御によりナノ空間の超高速プラズモン電場を制御し,新しいナノフォトニクスを展開する。

ナノ構造のプラズモン応答関数からプラズモン場を決定論的に時空間制御する概念図


 本研究では,すでにフェムト秒レーザーを用いた近接場走査型顕微鏡と相互相関周波数干渉計測によって超高速プラズモン場の複素パルス波形を計測し,応答関数を求める手法を確立した。そして,波形整形器を用いてフェムト秒レーザーパルスを整形し,特定のナノ構造のプラズモン波形を整形できることを実証した。これにより,プラズモン場による選択的2光子励起,コヒーレント反ストークス散乱,等の非線形過程も制御できる。また,光相変換材料を基板に用いると,相変化によって応答関数が大きくシフトすることを実測し,プラズモンスイッチ光回路への展開が期待できる。 また,応答関数に基づいたプラズモン制御の原理は,局在プラズモン場に限定されず,金属-誘電体-金属からなるプラズモン導波路における,導波性プラズモン波(表面プラズモンポラリトン: SPP)の伝播特性を制御できることも実証した。プラズモンのナノ集光応用へ展開する。  

研究プロジェクト

  • 相互相関周波数干渉と近接場顕微鏡を用いたフェムト秒プラズモン場の応答関数計測と決定論的時空間制御
  • 相互相関暗視野顕微イメージングを用いたフェムト秒プラズモン場の応答関数計測と決定論的時空間制御
  • 金属テーマ構造によるフェムト秒プラズモンのナノ集光とパルス制御
  • ダブルプローブ型フェムト秒レーザー近接場顕微鏡を用いたプラズモンポンプ・プローブ計測

フェムト秒プラズモン場の時空間制御のための近接場顕微鏡と励起・計測系



プラズモン導波路と応答関数に基づいて伝播制御されたプラズモン波形


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